企業が採用をするとき、「総合職」と「一般職」に分けて採用することが多いですね。
就活中の学生のみなさんも、自分は総合職がいいのか、一般職がいいのか悩むことが多いかも知れません。
そもそも、この「総合職」と「一般職」とは何なのでしょうか?
まず、大まかに言うなら、「総合職」とは総合的な判断が必要とされる企業運営の軸となる業務に従事する正社員、「一般職」とは、正社員であることは同じですが、定型的・補助的な業務を行う社員であるため、仕事の範囲は総合職のそれほど広くない社員とされています。
言い換えれば、「総合職」は将来の幹部候補生、「一般職」はその下で働くその他の社員ということでしょうか。
そうなると、「俺はバリバリ仕事をして将来は出世したい!」という人は迷うことなく「総合職」、「私は仕事よりプライベートを大事にしたいし、出世には興味ないし」という人は「一般職」という感じになりそうです。
ただ、この「総合職」には、決定的な違いがあります。
それは、
総合職には配置転換や転勤がある。
という点です。
では、何故配置転換や転勤が必要なのでしょうか?
これは高度成長時代の日本の企業の仕事の内容がそれを求めていたのです。
「総合職」が生まれた背景
一昔前の高度成長時代では、企業も事業を拡大している途上なので、これから新しい事業所も増え、新しい事業部もできるという時ですから、それらに柔軟に人を移動させ、配置させる必要がありました。
ですから、「自分はこの仕事をしたい」という限られた動機を持った人よりも、「会社の言う通り何でもやります!どこでも行きます!」という人が歓迎されたのです。
今のように「自分は何がしたいか」ということで就職先を決めるのではなく、皆、「自分はどの会社に所属するか」で就職先を選んでいました。でも、それは企業がそういう人を求めていたからです。会社を愛し、忠誠を誓う。それが社員に一番求められていたことだったのです。
とは言うものの、確かに転勤や職種が変わるのは本人にとっては大変なことなので、会社に従って我慢してくれる分、給料は多めに出しましょう。もちろん、定年までの雇用も保証しましょう。
それが、「総合職」の生まれた背景です。
「一般職」が生まれた背景
一方、そうした第一線に出てバリバリ働く「総合職」の仕事が忙しくなるにつれ、増える事務作業や雑用を処理する人も必要となってきたことと同時に、女性の社会進出により、女性の職場が求められ始めました。
女性は結婚したら家庭に入り、専業主婦になって家事と子育てに専念するということが一般的でしたから、転勤はさせられません。
昔は、女性の社員は「OL」などと呼ばれましたが、その実態は「コピー、お茶くみ」であり、定時退社し、良い男を見つけることが会社に来る目的であり、結婚したら「寿退社」が当たり前という時代だったのです。
補助的な仕事を担当し、入れ替えの効く後方支援要員です。
それが「一般職」の生まれた背景です。
企業の採算に合わなくなってきた「一般職」
一時、営業マンのアシスタントというのが流行ったことがありました。営業マン一人につき、女性社員が一人専属のアシスタントとして付いて、外回りをする営業マンの連絡係や事務処理など後方支援をするのです。
今思えば、良い時代だったなと思うのですが、今は、営業マンはノートパソコンやタブレットを持ち、出先でスケジュール管理もメールも見積書作成もいくらでもできます。そうしたアシスタント役はどんどん必要無くなってきています。
また、景気の良かった時代と違い、今は人件費削減も大きな課題です。「入れ替えの効く後方支援要員」はどんどん非正規社員に置き換わってきています。
その一方、女性の意識は大きく変わり、結婚したら辞めて家庭に入るということは、もはや一般的ではありません。育児休業を取得して、子育てが一段落したらまた会社に戻りたいという人が大多数になってきました。
そうした正社員に、今までのような補助的な仕事だけをやらせておいては、会社としては採算が合わなくなってきています。
今までの「一般職」という定義も見なおさざるを得なくなってきているのです。
今のキャリア感に合わなくなってきた「総合職」
高度成長時代は機能した年功序列の賃金制度は、多くの企業で既に廃止されています。
会社に忠誠を誓い、「何でもやります!」という社員のモチベーションは、「今我慢して頑張れば生活はどんどん良くなる」ということでしたが、今は長年仕えて頑張るというだけでは、給料は上がらないばかりか、定年まで雇ってもらえるのかどうかすら不安に感じる時代です。
今まで、会社の言うとおり何でもやってきた人達は、希望退職を募られる時になって初めて、「あなたのスキルは?キャリアは?」と聞かれても何も思い浮かばず、途方に暮れています。
でも長年信じていた考え方は容易に変えることもできず、行き着く先は「濡れ落ち葉」です。悲惨です。
これからの時代は、企業は何も保障してくれません。冷たいようですが、そう考えていることが正解だと思います。
その一方、今の若い人たちの中には、そのことを分かっている人達も多くなってきています。
彼らは、自分のやりたいことを明確に持って、自分のキャリア形成を着実にしていく。自分自身のために、自分でスキルを磨いていく。それが必要であることに気がついてきています。
そうした人達にとって就職とは、自分のキャリアを磨いていくための手段です。やりたいことをやるためのステージです。
ですから、入社してみないと何をさせられるのか分からないとか、自分の意思に関係なく違う職種に異動させられたり、転勤させられたりということは、それを嫌うというよりも、もう彼らの生き方に合わなくなってきているのです。
それに合わせて、「総合職」と「一般職」という区分けではなく、一部の企業ではジェネラリストとスペシャリストという区分けも出てきています。長くなりますので、これについてはまた別の記事で書いてみたいと思います。
これからの時代に必要な心がけ
冒頭に書いたように、今でも「総合職」と「一般職」は多くの企業で健在です。そして、多くの学生さんが、自分のキャリアをそのどちらかの枠にはめるべきかを考えています。
企業の枠組みが変わらない限り、そのどちらかを選ばざるを得ない状況はまだしばらく変わらないかも知れませんが、世の中は確実に動いています。
「自分は何をしたいのか」「自分のキャリアをどう作っていくのか」
「総合職」を選ぶにせよ、「一般職」を選ぶにせよ、これを明確に持つことが大事です。そして、少しでもそれができる会社を選びましょう。
あなたの希望を聞いていながら、それを無視して配属を決めたり、一方的に転勤を命じたりという企業は、まだまだ古い考えから抜け切れていないのです。
あなたの方が進んだ考えを持っているというケースが今後多く出てくると思います。
古い考えの会社だったら見切りをつける。そういう気持ちも、これからは必要なのだと私は思います。
では、今日はこのへんで!