という記事を読みました。
この記事の中の採用担当者氏は、こんなことを言って嘆いています。
スポーツでも勉強でもなんでもいい。自分がやりたいことに真剣に向き合い、苦労してやり遂げたという学生が少ないですね。
自分で決めて何かをやったという学生が少ない
自分の学生の頃に比べてよく勉強しているし、真面目ですが、外国人に比べてハングリー精神や向上心の高さが全然違います。気迫というか、バイタリティやエネルギッシュさが根本的に欠けています
やりたいことが分かっている学生はごく一部
私が新卒採用を長年やっていて感じていることです。
確かに、自分がやりたいことが決まっていて、それに打ち込んできたという人もいますが、その一方、特に何もなく、履歴書に書けることはバイトのことだけ。趣味は読書。そういう人の方が多いです。
今の若い人にハングリー精神や気迫がないと嘆いても仕方ありません。だってそういう環境で育ってこなかったのですから。小学校時代から「競争は悪いこと」であるかのように教育されてきた日本の若い人に、いまさら何を求めているのかと思います。
で、この採用担当者氏は、そういう「やりたいことに打ち込んできた人やハングリー精神のある人」が何故欲しいんでしょうか?
企業に入ればその人の「やりたいこと」ができる場を提供するとでも言うのでしょうか? 単に「苦労してやり遂げる」ことができるストレス耐性を期待しているだけじゃないでしょうか。
「自分で決めて」といいますが、本気で自分で決めて行動する人を求めているのでしょうか?
この採用担当者氏こそ、自分が「若い人はこうあるべき」という型を決めて、それに当てはめようとしているのではないですか。
あなたの方こそ、「自分で決めて行動する」人を使う覚悟が本気でありますか?と私は言いたいです。
でもそういう学生を求めていたのは企業の側だった
今までの企業は、「自分で考え、自分で決めて、行動する」ような人を求めて来なかったのです。
この仕事をやれと言ったらそれを一生懸命やる。あそこに行けと言われたら進んで住む場所も変える。そういう人を長年求めてきたのは、企業の側ではないですか。
それを今さら、「自分のやりたいこと」とか「自分で決めて」とか、何を言っているのでしょうか。
それとも、この採用担当者氏は、まだ若く、今まで自分の企業が何をしてきたか分かっていないのでしょうか。
普通の学生を磨いていくのが企業の仕事
私が思うに、今の若い人はとても素直で真面目で、素は良い人ばかりだと思います。
ただ、ハングリー精神が育つような環境で生きて来てはいないので、一部の「苦労が人を育てる」というお考えのお年寄りからは頼りなく見えることはあるかも知れません。
でも、上から目線で「採用したい学生がいない」などと嘆いていても前に進みません。それが今の普通の学生の姿なのですから。
あなたには物足りなく映っても、それは彼らのせいではない。
光っていなくても良いではないですか。やりたいことがなくても良いではないですか。彼らはまだ何も磨かれていない原石だということです。
原石を手に入れたら、それは磨けば必ず輝きを放つと信じて育て上げることです。
「人の可能性を信じること」
それが出来なければ、これからの企業は人を育てて業績を上げていくことは出来ません。
これからの採用担当者に求められているのは、無い物ねだりをして嘆くことではなく、その覚悟を持つことだと私は思います。