という記事の中で、働き方改革に期待する学生の意見としてこのようなものがありました。
・裁量労働制を取っているのにもかかわらず、契約した時間を超えた分の残業代が支払われていないような違法企業が駆逐されること(理系男子)
実は、この認識は間違っています。
どこが間違っているかわかるでしょうか?
裁量労働制では毎月一定額の残業代が出る
まず、裁量労働制とはどんな制度かということなのですが、仕事の性質上、いちいち毎日の残業時間を管理することが適当ではない、もしくは管理が難しいというような業務に限って、それであるなら、「毎日何時間働いたことにしましょう。」という制度です。
問題は、1日何時間働いたことにするか?なのですが、例えば、毎日平均2時間くらいは定時より多めに働いているから、1日10時間とするか?というようなことを、あらかじめ労使で話し合って決めるのです。
その場合は、2時間分の残業代が法定通り支払われなくてはいけません。
裁量労働制でない場合との大きな違いは、日によって、例えばある日は7時間働いた、別の日は14時間働いたということがあっても、毎日「10時間働いた」とみなされるということです。
つまり、毎月何時間働こうと、一定額の残業代が支払われるということです。
裁量労働制を適用するには条件がある
で、冒頭の学生の意見ですが、「契約した時間を超えた分の残業代が支払われていない」のが違法だと言っていましたよね。
これが間違いなのは、もうおわかりですね?
裁量労働制では、契約した時間を超えた分の残業代は支払われないのです。
(ただし、休日労働や深夜労働については別途割増賃金を支払う必要があります。)
そうすると、
「それでは労働者に不利ではないか。会社が残業代削減のために悪用しそうだ」
と心配になる人もいると思いますが、そういうことにならないために、法律ではキチッと2つの制限をかけています。
1つは、裁量労働制が適用できるのは、一部の限られた職種だけだということです。
長くなりますので、具体的な職種についてはこの記事を参考にしてみてください。
もう1つは、裁量労働制を適用するためには、労働者の合意が必要であり、具体的には労使協定を結ぶ必要があるということです。
これらの制限によって、企業が裁量労働制を労働者に不利になるような悪用をしないように歯止めをかけているのです。
(詳しくは、上記は「専門業務型裁量労働制」についての内容です。もう一つ「企画業務型裁量労働制」というものもあり、こちらは要件が少々異なるのですが、ここでは長くなるので割愛します。)
裁量労働制を悪用する企業もあるので注意
そのような制限があるとは言っても、労働者より強い立場であることを悪用して、なし崩し的に労働時間の実態に合わないみなし労働時間を設定したり、適用職種でないのに導入していたり、正しく協定締結の手続きを取っていない企業もあります。
あなたの会社、もしくはこれから受けようとしている会社が裁量労働制を取っていたら、まず、自分の職種は適用職種なのか、みなし労働時間が何時間になっているのか程度は、把握するようにしてください。
では、今日はこのへんで!