(この記事は2015年に書いたものです。)
今年の新卒採用は、表向きは就活スケジュールの変更により、選考開始は8月からということになっていますが、蓋を開ければ案の定、既にどんどん選考は始まっていて、内定出しも、むしろ例年より早い感じがします。
早く内定を出した企業は、8月から開始される大企業の選考後に内定者に逃げられないように、それまでの長い期間、あの手この手でフォローをする必要があります。
でも、今年の状況を見ると、例年以上に、内定者が逃げる、つまり、入社承諾書を出しているのに、その後に内定辞退をする人が多くなることは間違いないと推測します。
タイトルに書いた、「入社承諾後に内定を辞退したいときにはどうすれば良いか?」という問題は、多くの学生さんの気にするところでしょうし、ネットにはその質問と回答が多く出ています。
でも、それらを見ると、「入社承諾書の提出後の辞退は法的には可能です。」という主旨が多いように思います。
確かに、法的には可能です。入社前だろうが、入社後だろうが、基本的に職業選択の自由があるわけですから、労働者は自分の働く場所を選ぶ権利はいつでもあります。
でも、それだけを考えていればいいのでしょうか?
私が人事をやっていて経験した事例をお話します。
遠方から謝りに来た就職課長
ある大学の就職課長氏が、「お邪魔してご挨拶したい」と申し入れてきました。その大学の1人の学生さんに内定を出し、入社承諾書を受領した後のことでした。
最初は、内定の御礼かと思いましたが、飛行機に乗ってこなくてはいけない距離の遠方の大学であり、それにしては丁寧過ぎると思って、嫌な予感がよぎりました。
予感は当たりました。就職課長氏は、地元のお土産の包みとともに、「入社承諾書提出後の学生が辞退したいと言い出した。大変申し訳ないが、辞退をお許し頂きたい」という旨のことを話し、深く頭を下げられました。
そこまでされては、こちらも何も言うことはできず、お受けするしかありません。
この就職課長氏は、入社承諾後の辞退について非常に重く受け止めておられ、今後は絶対にこのようなことがないように、学生に厳しく指導をすると言っておられましたので、この大学は、今後は今まで以上に安心して学生さんを採用できるという印象を我々は持ちました。
就職先を選ぶのは当然の権利です。しかし・・・
その一方、全ての大学がこのように考えておられるわけではないことも、我々は知っています。
私の会社では、入社承諾前の内定辞退については、内定者本人からの連絡のみで、特に何もなく了承をしています。しかし、入社承諾書を提出したら、それは、責任ある社会人として、必ず入社すると会社に約束をしたわけですから、重く受け止めていただかないと困るということで、入社承諾後に辞退の申し出があった場合は、その後に大学側に抗議の手紙を送ることにしています。
それでも、何も反応してこない大学もありました。
そのような大学は、学生に入社承諾書の重みについては何も教育をしていないのでしょうから、今後はそこから採用することを躊躇してしまいます。
以上のように、あなたには当然の権利であっても、そのことによって、その後にあなたの後輩たちの就職が不利になるという影響が出るかもしれないということです。
就職は、自分の人生についての大事な決断です。一度決めたことでも、もう一度考えなおしたいこともあるでしょう。自分で職業を決めることは当然の権利でもあります。
「入社承諾書提出後の辞退は絶対するな!」などと言うつもりはありません。
ただ、単純に「法的に問題なければ何をやってもいい」というような人間にならないでいて頂きたいと、私は願うのです。
入社承諾書の提出期限に対してどう回答すれば良いか?
では、内定をもらって、入社承諾書をいつまでに出してくださいと企業から言われたらどうすれば良いでしょうか?
その場合は、「他にも志望企業があって、そちらの結果がいついつに出る予定なので、それまで待ってもらえないだろうか?」ということを正直に言ってください。
うちの企業が第一志望ではないと分かることは、採用担当者にとっては面白くないかもしれませんが、あなたのことを本当に欲しいと思ってれば、待ってくれることも大いにあると思います。
逆に、「そんなに長くは待てない。いついつまでに回答をもらえなければ、内定は取り消す」と言われることもあるでしょう。その場合は、悩むとは思いますが、決断してください。第一志望をあきらめるか、両方落ちるリスクを取るかです。
決して、嘘をついて二股をかけるということはすべきではないと私は思います。
これはもう、人に迷惑がかかるとか、法的にどうかという次元の問題ではありません。
あなたが、正直ではない生き方をしていくのかどうか
という問題です。
自分のためなら、人に嘘をついても良いとするのかどうか?
難しい決断だとは思いますが、そこを良く考えて欲しいと思います。
いろいろと悩むところが多い入社承諾書については、他にもこんな記事も書いています。よろしければご参考にしてください。